代表 棚網 多枝子
住所 〒156-0053  世田谷区桜3-18-9
TEL 03-3420-5646

 東京農業大学・世田谷キャンパスのお隣にある、棚網商店さん。来春(2014年)で、創業90周年を迎える、歴史あるたばこ屋さんです。お店の前に郵便ポストがあり、店頭では切手・はがき・印紙も扱っているので、近所の方にはもとても便利なお店です。ここで長くお店を切り盛りされている奥様にお話を伺ってきました。

お店の創業はいつ頃でしょうか?

お話を伺った奥様。

 奥様:大正13年です。関東大震災の翌年ですね。今の農大の敷地は、昔は陸軍の学校だったんです。農大は戦後にここの敷地に移転してきました。ですから、創業当時は、たばこ屋さんじゃなくて、軍人さんが身につけるゲートルや軍手などの小物を売っていました。たばこを扱い始めたのは、創業して半年くらい後ですね。

お店を始めたのは、奥様のご両親でしょうか?

たばこと飲み物の自動販売機。

 奥様:私の主人の両親がお店を始めたんですが、義父は馬事公苑にお勤めに出ていました。ですから、お店は義母ひとりでやっていましたね。義母が亡くなってから、私がお店を継ぎました。夫も外に勤めに出ていたので、両親と同じような形ですね。

それでは、ご主人がお勤めを退職されてからは、お二人でお店を?

いつも奥様がいらっしゃるお店の窓口。

 奥様:退職したあとも、主人はお店には出なかったですね。お隣の人にも「ご主人はお店に出さないほうがいいよ。お客さん帰っちゃうよ」って言われていました(笑)。主人は技術職の人で、黙っているので、商売に向かなかったんでしょう。もう45年くらいお店をやっていますが、農大を卒業した方が何年かぶりでお店にみえたときに、「他のお店はなくなっちゃったけど、ここだけはあるね」って言ってました。昔ながらのお店がだんだんなくなってチェーン店になっていっちゃいますよね。私がこれだけ長く商売を続けてこられたのは、たばこだったからじゃないかと思うんです。いろいろと厳しいですけど、他の業種だったらダメだったかもしれないですね。

お客様は地元の方が多いでしょうか?

ストックもきれいに保存しています。

 奥様:お隣なので、農大にお勤めの方とか、その関連で出入りされている方が半分くらいで、あと半分は、地元の住人と通りがかりの方ですね。お店って不思議なもので、お客様とお話をしているときには、別のお客様が後ろに並ばれていたりするものなんですよ。電話も1分も話さないのに、そういうときにお客様がみえたり。それでいて、私が窓口の前に座っているときには、お客様がいらっしゃらない。人の流れって不思議なもので、面白いですね。商売は一様にはいかないです。

ご商売で気をつけていらっしゃることは?

農大のお隣、世田谷通りに面したお店です。

 奥様:やっぱり100人のお客様がいたら、100通りのお客様に合わせた対応ができないといけませんね。10円の切手を買うお客様と、たばこを何万円も買うお客様も、同じお客様。すべてのお客様を大切に、と思っています。何も買わなくても、道を尋ねにみえる方もいらっしゃいます。うちの店が開いていると、ほっとすると仰る高齢者の方もいらっしゃる。たばこ屋は小さな灯りという感じです。

昔、郷里から出て来たばかりの農大生がうちに来たときに、私が「返さなくていいよ」って傘を渡したらしいんです。それで、卒業して何十年も経ったあと、その方がお礼を言いにお店に寄ってくれたんです。私は、そのことを覚えていなかったんですが、嬉しかったですね。お互い様ですからね。私も人様に助けていただくんですから。小さな店には小さな役目があるんじゃないかと思っています。これは自慢ですけど、とてもいいお客様に恵まれています。たばこの灯も消したくないですね。

周辺案内

馬事公苑

 18ヘクタールを超える緑の敷地内に多くの馬関連の施設があります。馬場以外にも、日本庭園や遊園地、ふれあい広場などが設けられ、ピクニックや散歩など、憩いの場としても親しまれています。

世田谷区上用賀2−1−1
JR渋谷駅から東急・小田急バス「農大前」下車徒歩3分ほか

東京農業大学「食と農」の博物館

 農大の教育と研究の成果を発信する博物館。常設展では日本の酒器や古農具を展示。併設のカフェでは農大発のドリンクや食事を楽しめる。また、ショップにはオリジナル文具、農大生協によるお菓子も販売しています。

世田谷区上用賀2−4−28
JR渋谷駅から東急・小田急バス「農大前」下車徒歩3分ほか

編集後記

 お店は日曜日だけお休みですが、奥様はお休みの日曜も外に灰皿を出しておくそうです。たばこを吸う方が灰皿がないと困るだろうということで、毎日外に灰皿を出して一日に二度三度掃除をするとのこと。袖振り合うも他生の縁ということで、お客様に限らず、お店に訪ねてこられる方は皆、大切にされている奥様です。そんな温かいお人柄にひかれて、たくさんの方がお店に来られるのだろうと思いました。来春で90周年ということですが、100年、120年と、たばこの灯を守っていってほしいです。