代表 大川 文明
住所 〒166-0012  杉並区和田1-51-19
TEL 03-3381-5187

 東京メトロ丸ノ内線・中野富士見町駅より北へ向かう閑静な住宅街にマルト商店さんがあります。同じく丸ノ内線の新中野駅からも徒歩圏内となります。ちなみに、屋号のマルト商店さんは、○の中にカタカナの「ト」と表記します。元々は昔、浅草で靴の卸問屋をしていた先々代が○の中に「藤」と書いて「マルトー」と号していたことから、先代が音引きを取って「マルト」に改めたとのこと。こちらでたばこ、お酒、食料品を扱うお店のご主人と奥様にお話を伺ってきました。

お店の創業はいつ頃でしょうか?

お話を伺ったご主人と奥様

 ご主人:昭和34年5月です。家内の父がたばこ、食品、雑貨を扱う店を始めました。お酒を扱い始めたのは、ずっと後ですね。昔、うちの店の向かいに八百屋さんがあったんですが、その店が個人スーパーに変えて、うちと扱うものがほとんど同じになってしまったんです。それで、うちも売り上げが落ちてきてしまったので、何とかしようということで、先代の義父がいろいろ奔走してお酒販売の許可を取ってきました。でも、今はまたお酒のほうも厳しくなってきてしまったので、11年前から「三代目茂蔵」というお豆腐を販売するようになりました。

そういうお豆腐製造の会社があることをご主人が知って?

ついつい手がのびるレジ前の和菓子

 ご主人:お酒の問屋さんから埼玉にそういう会社があって、その問屋さんが取引している酒屋さんでも、扱い始めたところがあると聞いたんです。それで、うちもやってみようかと。今は東京でも「三代目茂蔵」の豆腐を扱うお店が増えましたけど、杉並区では、うちが最初だったんです。以前からのお客様には「酒屋さん」と呼ばれますが、最近のお客様には「お豆腐屋さん」と呼ばれます(笑)。始めた頃は今ほど種類はなかったんですが、どんどん増えて豆腐のほうは順調に伸びてお客様もよく来て下さるようになりました。

 奥様:お豆腐を置くようになってからは、若いお母さんが小さなお子さんを連れて買い物に来て下さいます。

新しい客層が増えたんですね。先代は奥様のお父様ということですが、女性が酒屋さんを継ぐのは大変だったのではないですか?

たばこの陳列棚。銘柄は150種と豊富

 奥様:うちは女ばかり三人で、男の子がいなかったんです。

 ご主人:結婚したばかりの頃は、私はサラリーマンでしたけど、お酒のほうが順調に伸びていた時期でした。当時は缶より瓶が主流で、配達も1日に何度もあり、義父ひとりではとても大変で男手が必要でしたから、私が店に入りました。その頃、うちはこのあたりの酒屋としては新参でしたから、1階のお宅なんかにはとても入れなかったんです。そういうお宅は昔からの酒屋さんが担当していて、エレベーターのない上階にあるところがうちに回ってくるんです。古いアパートの5階というところもありましたよ(笑)。それもすべてありがたくお引き受けさせていただきました。

重い瓶のケースを運ぶ酒屋さんは本当に大変ですよね。他に思い出に残っていることはありますか?

お酒、たばこ、食料品が揃っています。

 ご主人:私が店に入る前ですから、相当昔ですけど、ラジオの取材で家内たち三姉妹が取り上げられたことがありました。

なるほど。美人三姉妹とかで。素敵ですね!

お酒の陳列棚

 ご主人:美人三姉妹で有名だったんです。義母がきれいな人で、日本橋の出身なんですけど、日本橋小町とかで週刊誌に載ったりしていました。義父が言うには、娘たちより女房が一番綺麗だって(笑)。

奥様は美人の遺伝子を受け継がれて(笑)。それでは、ご商売で気をつけていらっしゃることは?

ご近所の皆さんから愛されているお店です。

 ご主人:気をつけてるというほどのものではないですが、このへんは、本当にお店がなくなってしまって、食品なんかを置いているところがうちくらいになってしまったんです。ですから、お客様に少しでも間に合うように「こういうのがあったらいいな」と言われるものは、なるべく置くようにしています。それから、お菓子を買いに来る子供さんが教えてくれたりするんですよ。「○○っていうのが流行ってるよ!」とか。子供のほうが流行のお菓子とかよく知っていて、情報が私らより早いでしょ。お子さんからお年寄りまでお客様とコミュニケーションを取っています。うちは完全に地域密着型で、そのあたりがコンビニとは違うと思います。

お客様との温かい交流を間近で見て、ご商売を楽しんでいらっしゃるのが伝わってきます。

 ご主人:毎日夫婦二人で店に立ってるので「毎日一緒で飽きない?」ってお客様に言われたりします(笑)。「いつも二人で笑ってるけど、何かいいことあったの?」とか。それもひとつの店のモットーかもしれませんね。

 奥様:せっかく働くなら、楽しいほうがいいですよね(笑)。

周辺案内

鍋屋横丁

 江戸時代、江戸から青梅街道を歩いて妙法寺へ向かう際に左折する交差点に「鍋屋」という茶屋があったことから、鍋屋の横丁と名づけられた。現在も商店街として様々な店舗が軒を連ねており、毎年8月には「なべよこ夏まつり」が開催され、多くの人で賑わう。

中野区本町4~中央4
東京メトロ丸ノ内線「新中野」下車徒歩1分

慈眼寺

真言宗豊山派の寺院で、天文13(1544)年の創建と伝えられている。江戸時代に中野区中央3丁目7番付近から当地に移転した。境内に馬頭観音や庚申塔などの石仏群がある。

中野区中央3−33−3
東京メトロ丸ノ内線「新中野」下車徒歩3分

編集後記

 取材中にも、お店にいらしたお客様が「取材?」と気軽にたずねてこられ、このお店が地域住民にとっていかに大切かをお話して下さいました。今ではなかなか珍しい、お客様との距離感が近い、親しみやすいお店です。ご夫婦とても仲むつまじく、ケンカをしたことがないとのこと。羨ましい限りです! ご夫婦の温かい雰囲気と笑顔があっての愛されるお店なのだと思います。こういうお店があることが、近所の方々にとって、どれほど支えになっているかを改めて感じました。