代表 笹本 繁宏
住所 台東区上野

 日本を代表する商店街、"アメ横"の入り口であるJR御徒町駅すぐそばにある笹本たばこ店さん。お店を仕切るご主人はテレビや雑誌等、さまざまなメディアにも取り上げられたことのある街の人気者。立地の良さではなく、ご主人の明るくて楽しいお人柄と、お客様の立場に立った経営で訪れる人の絶えない人気店をご紹介します。

ご商売を始められたのはいつ頃ですか?

異国情緒あふれる看板が目印

 お店を始めたのは昭和33年です。その頃北口しか出口の無かったJR御徒町駅に南口出口ができるということになったんですね。それで、うちの前もたくさん人が通るようになるだろうなと。じゃあここで何か商売でもやろうと指定を取ってたばこ屋を始めたんです。
 当時、私はサラリーマンだったので、昼間のお店は女房とお袋の二人で切り盛りしてました。僕は会社に行く前と帰ってきてからいろんな処理や計算なんかをやったりしてね。その後、昭和52年に定年退職してから専業でやっています。
 当時55歳で定年と言ってもまだまだ働ける歳でしょ。で、定年延長というのが社会問題になっていた時期でね。同僚なんかは系列の会社に就職して引き続きサラリーマンをやる人もいたけれど、僕はそこで「よし、これからオレは本気でたばこの商売一筋でやってみよう」と決心したんだよ。だから、55歳から新たなスタートを切ったというわけなんだよね。

昔と比べると、このあたりは変わりましたか?

ご主人の思い出が残る地図

 明治39年に祖父が山梨の方から出てきて以来、ずっとここで生活してるんだけど、やっぱりずいぶん変わったよね。
 たまたまうちに昭和12年6月に調査したという古い地図が残っていてね。当時誰がどこに住んでいたなんてのが細かく載っているんだけれど、それを見ると、このあたりはビルなんかまだ全然なくて長屋だったんだね。いろんな人が決められた区画の中に住んでいて、その間には路地がたくさんあってね。こういうのがいわゆる下町の生活ってやつだよね。今はもうまるっきり変わっちゃったけどね。

店内には演歌のCDがたくさんありますが?

店頭にはスタンド灰皿が置かれ、一服できます。

 演歌が大好きでね、近くのクリーニング屋さん、アメ横の中のレコード屋さんと僕で演歌のトリオを組んでいるんだよ。クリーニングの"ク"、タバコの"タバ"、レコードの"レ"で合わせて"くたばれーず"(笑)。CDも出してるよ。レコード屋さんが作曲とかいろいろやってくれるんだよね。3人の歳を合わせると230歳を超えてる(笑)。
 まあ、CDは何も販売を目的でやっているわけではなくて、仲間と一緒に作ったひとつの記録だよね。
 でもこういうことから演歌歌手の方とか作曲家の先生たちとお付き合いが生まれるんだよね。だから面白いわけ。
 それと、いかにお客様の心をつかむかという意味では演歌も商売も同じだよね。

在庫のカートンが店内に並んでいるんですね。

カートンと演歌のCDに囲まれて笑顔のご主人

 もともと一坪程度のお店だったのを平成7年に7坪程度に広げたんだよね。で、その時に思ったのが、スーパーなんかと同じで、みんな好きなものを棚から取ってレジで精算すればいいんじゃないかと。そうすればカートンだって在庫としてしまっておかないで、全部並べて置けばいいんだから。
 人間の心理として、やはりある程度まとめて買っておくと安心感があると思うんだよね。これは僕もたばこを吸うからそういう経験があるんですよ。家にたばこが無くなって困ったときに、夜中にたばこの自販機探してね(笑)。こうやって並べると在庫も一目瞭然だしね。見ていても気持ちいいでしょ(笑)。

きれいに並べられていますね。

高級感あふれる木のカウウターになっています。

 その他にも、5台ある自販機を国産・輸入製品を一緒にしないでメーカーごとに分けたり、メーカーのキャンペーン品を積極的に店頭に並べたり、お店の前に灰皿を置いたり、常に現状を把握して、売り上げを上げるためにいろんな工夫をしていますよ。そうやってお客様の立場に立って営業努力をしているとお客様はちゃんと来てくれますよ。
 僕は今年で82歳だけど、それは戸籍上の問題だけであって実際はそうは思ってない。これからも、毎日いろんなことを考え、工夫しながら一生懸命たばこ屋のおやじとしてがんばっていくよ。

周辺案内

アメ横

 お菓子・乾物・生鮮食品等の食品類から靴・衣類等のファッション商品まで、何でも揃う商店街"アメ横"は相変わらず人の波が途切れないほどの大賑わい。しかしながら、笹本たばこ店さんの前から続く御徒町駅前通り商店街も、アメ横に負けず劣らずの盛況ぶりでした。御徒町は本当に活気のある街です。

編集後記

 今も昭和の風情が残る店内や、ご主人が手入れされているという多くの観葉植物は、まさに時代のキーワード"スロー"を感じさせる雰囲気。喫煙スペースもあるため、店内でたばこを吸われる方もいらっしゃるようですが、ここでゆっくりとイスに腰を下ろしての一服はまさに至福の一時と言えそうです。お近くに寄られた際には、お試しになられてはいかがでしょうか。