代表 戸部 松美
住所 豊島区上池袋

副都心のシンボルのように聳え立つサンシャイン・シティや街を訪れる人々の雑多なエネルギーを感じる池袋ですが、ひとつ中道を散策すると、誰もが一度は耳にした事がある大学や各種教育機関に行き当たり、童話雑誌「赤い鳥」を創刊した鈴木三重吉や推理小説の大御所 江戸川乱歩他、文学界の著名人達が長年住んでいたという跡地や漫画家の梁山泊と異名を取る「トキワ壮」など、文芸の奥深い歴史を感じ取る事が出来ます。その文学の歴史の舞台で、書店を続けながらたばこを扱っていらっしゃる「豊文堂書店」さんのオーナー戸部松美さん、息子さんの孝一郎さんを訪ねてみました。

たばこと本を扱うきっかけは?

店前の路上は、車で来ても駐車できる広々スペース。二箇所の灰皿と四箇所の自販機を設置してあります。

 松美さん:昭和35年頃、私の叔父である戸部兼次郎が、やまと商事豊文堂書店を開店させ、後年、妻の照子にたばこの免許を取得させて、書店のフロントで看板娘として営業を始めさせたというのがきっかけです。当時は、たばこを販売する事で、家賃分の生活費を稼げましたから(笑)。
 昭和57年11月1日に、創業者の叔父が高齢のため引退すると言うことで、その後の経営を私が引き継ぎました。

今も当時とお変わりなく営業を

店舗面積は36坪です。

 孝一郎さん:いえ、大型販売店などの進出で、我々を取り巻く状況が当時と変わってきていますので、他店との差別化を図るため、区役所やご高齢の方を対象に、本やたばこを配達したり、たばこの品揃えを、最近自販機などで見かけなくなった「ピースの缶入り」や「エコー」など、他店ではあまり扱っていない種類のたばこを置いたりしています。また、ご要望さえあれば何でも取り寄せますよ!

屋号の由来などをお聞かせ願えれば

馴染みのお客さんの通う窓口にはピース缶やエコーも置いています。

 孝一郎さん:書店の経営の方が先でして、豊島区に同名の書店が無かったので、豊島区の一文字取って「豊文堂書店」とし、たばこの方の屋号は、戸部という名字をとって「戸部たばこ店」という事になりました。

お客様はビジターが多いのでしょうか?

明治通り沿いの入り口とは全く趣が変わる裏手

 松美さん:明治通り沿いという事もありますし、区画整備の都合で店舗前の路上を駐車スペースの様に広くとっているものですから、車で通りすがりに来られる方も少なくはありませんけれど、ほとんどのお客様は、顔見知りの地域の方達ばかりです。
 明治通りに面している入り口からは想像もつかないでしょうけれど、裏手は本当に閑静な住宅街で、昔から住んでいらっしゃるご高齢の方達が、昔と変わらず、たばこをカートンで買われて行きます。もともと書店の売り場という特性上、常に誰かがカウンターで店番をしていなくていけませんから、たばこを買われる方も同じように、自販機より顔が見える手売りを好んで、しかもカートンで買って行かれるお客様が多いですね。

対面販売の上で気を付けていらっしゃる事は?

いつもお店番をしている奥様の美智子さんと店員の池田さん。

 孝一郎さん:常連さんにはたばこの銘柄を聞かなくても、すぐにたばこをご用意できるのですが、通りすがりの方に販売する場合には、最近のたばこは種類がとても増えているので、銘柄と値段を把握していない方も多いようで、間違えないように気を配らないといけませんね。
 それと、若い方は、例えばマルボロライトをマルキンと言ったり、たばこの銘柄を略すことが多いので、略語の傾向と対策が大変です。

周辺案内

子安稲荷神社

 創建は天正年間以前にさかのぼり、上池袋の前身の村、旧新田堀之内村の鎮守。猿田彦・大鳥・伏見稲荷を合祀した境内社や参道開設社殿再建の記念碑があり、旧町名(堀之内町)継承碑もある。

編集後記

 今回お話を伺った息子さんの戸部孝一郎さんは、こちらの取材に一つ一つ言葉を選んで話して下さる真摯なお人柄でした。最初にお目にかかった時、黙々とたばこを並べ替えていらっしゃる姿を記事にしたくて、写真撮影の被写体としてお願いしてみたのですが、とってもシャイな方で写真には写っていただけませんでした。オーナーの戸部松美さん譲りなのでしょうね。