代表 斉藤 秀男・綾子
住所 〒131-0032  墨田区東向島2-15-8
TEL 03-3619-6504

 江戸っ子の“粋”な心遣いが残る街“曳舟”。こちらで、長きにわたってたばこ店を営んでいる斉藤ご夫妻は、お客さまとのつながりを何よりも大切にしながら地域に愛される店づくりを目指していらっしゃいます。そんなおふたりに、曳舟の街の魅力と、お客さまとの心温まるエピソードについてお話をしていただきました。

お店はご夫婦で営んでいらっしゃるのですか?

関東大震災の前から営まれています。

 ご主人:以前は、家内ひとりでやっていたのですが、私が2年前に会社を退職してからは夫婦ふたりで店を切り盛りしています。とはいえ、99%は家内に任せきりですけどね(笑)。
 奥様:今は、主人がよく店番をしてくれるので助かっているんですよ。18年前に主人の母が亡くなってからは、ずっと私ひとりでしたから。最初は『客商売は向いてないんじゃないか…』と不安でしたけれど、実際に始めてみるとお客さまとのコミュニケーションが楽しくてね。
 ご主人:この辺りはまだ、昔ながらの人と人とのつながりが残っているんですよ。常連のお客さまが多いので、『旅行に行ったからお土産を買ってきたよ』なんて持ってきてくれることもありますからね。

たばこ屋を始めたのはいつからですか?

若々しく物腰柔らかなご主人です。

 ご主人:多分、創業は関東大震災の前くらいからだと思うのですが、それも定かではないんです(笑)。この近くに「曳舟川通り」という道路がありまして、昔その辺りに川が流れていたそうなんです。当時、私の祖父がそこで舟屋をやっていまして、それがたばこを扱い始めるキッカケになったのだと思います。
 でも、私が生まれる前に祖父は亡くなっておりましたし、物心ついた頃には、すでにお袋が店を切り盛りしていたので、はっきりしたことは分かりません。その頃、おやじは会社勤めをしていましたから、毎朝出勤前に店の掃除をしていたのを覚えています。

ご主人が小さい頃、この街はどんな様子だったのですか?

 ご主人:私が小さい頃は、まだ路面電車が走っていました。また、先ほどお話ししたように川が流れていたので、そこでよく釣りをしたものです。学校から帰るとすぐに、釣り竿とバケツを持って飛び出していましたね(笑)。曳舟川は、ちょうど隅田川と荒川を結ぶ運河のようになっていたので、満ち潮のときは海魚が、引き潮のときは川魚が捕れて、魚釣りにはベストの環境だったんですよ。
 最近ではずいぶんと新しいマンションが建ちましたが、当時は原っぱが多かったので、子どもがのびのびと遊ぶことができました。
 「曳舟」という地名も、当時流れていた川が浅かったため、舟に紐を引っ掛けて引っ張っていたことから名づけられたと聞いています。

現在は、どのようなお客さまが多いですか?

商売繁盛には欠かせない神棚です。

 ご主人:この辺りは飲食店が多いので、まとめてカートンでご購入される方が多いですね。また、東武伊勢崎線や京成線、都営線などが通っていてアクセスが良いので、工場や会社も多いんです。ですから朝夕は、そこに勤める従業員の方も買いにいらっしゃいますよ。
 お勤めの方々にいつでもお立ち寄りいただけるよう、朝は7時から夜は11時まで“セブンイレブン”で営業しています(笑)。
 70%が自動販売機で購入されるお客さまですが、なるべく店を開けるように心がけています。たまに銘柄を間違って買われる方もいらっしゃるので、店番をしていないとすぐに取り替えて差しあげられないですからね。
 奥様:2011年には、お隣の駅「業平」に“すみだタワー”ができますし、この辺りの再開発も進んでいるので、今後さらに活性化されていくのではと期待しているんですよ。

お客さまとの思い出深いエピソードを教えてください

商品を切らさないよう管理された棚

 奥様:以前、常連のお客さまに赤ちゃんがお生まれになったので、お祝いを差しあげたんです。そうしたら、出産後わざわざお子さんを連れて遊びにきてくれたんですよ。まるで孫を見るような気持ちになって…。あのときはとても嬉しかったですね。
 ご主人:うちにも5歳と2歳になる孫がいるのですが、以前、近所のおもちゃメーカーに勤めるお客さまが『お孫さんにプレゼントしてあげて』と、おもちゃを持ってきてくれたことがありましたね。今でもこの街には、そうした人との絆が残っているんですよ。
 皆さん良い方ばかりで、引っ越しをされても、たまに立ち寄ってくださいます。昨日も、常連のお客さまがいらっしゃって、3時間も話しこんでしまいました(笑)。

休日はどのように過ごされているのですか?

パソコンでの写真編集がご主人の楽しみ。

 ご主人:たまに家内と旅行に行くこともありますが、ほとんど家で孫の世話をしていますね。
 私は写真が趣味なので、デジカメで孫の写真を撮ってはパソコンに取り込んでアルバムを作っています。
 奥様:私も、今は孫と遊ぶのが一番の楽しみですね。近所に住んでいるので、毎週休みの日には泊まりに来ています。一緒におもちゃで遊んだり、ゲームをしたり、外に出かけたりと大忙しですよ。(笑)
 ご主人:会社務めを終えた現在は、地域の方々とのつながりを大切にしながら、ゆったりと毎日を楽しみたいと思っています。

周辺案内

すみだタワー

 平成18年3月28日。曳舟から一駅先の業平に、第二の東京タワーと言われる「すみだタワー」が建設されることが決定しました。これは、地上デジタル放送に備えたもので、およそ500億円を投じての巨大事業となります。高さ610メートルという超高層タワーが完成すると、トロントにあるCNタワーを超え世界一の高さになるのだそう。今回は、建設予定地を訪れてみましたが、まだ着工前とあって閑散としていました。今後「すみだタワー」が建設されることで、このエリアがどのように変わっていくのか。しっかりと見届けていきたいと思います。

建設予定地:東京都墨田区押上一丁目の一部(東部鉄道所有地)

編集後記

 曳舟川で魚釣りをし、日が暮れるまで原っぱで駆け回っていた幼き日のご主人。今ではすでに失われてしまった風景ですが、古き良き時代の心の温もりが、今でも地域の方々に深く息づいているのを感じました。長年、奥様ひとりで切り盛りしてこられた「斉藤商店」ですが、今後はご主人と共に、いつまでも仲良く温かなお店を営んでいただきたいと思います。