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【1974/昭和49年】
父は私が小さな頃からヘビースモーカーだった。小さな頃は、たばこのあの独特の匂いが嫌だったが、それは父の匂いでもあり、父との思い出でもある。私は両親におもちゃを買ってもらった記憶がほとんどない。そのかわり、父はよくたばこで私と遊んでくれた。口をとがらせ、ほっぺたを軽くたたき、たばこの煙で「輪っか」を作ったり、私の頭に煙を吹きかけ、「頭が火事だ!」と言っておどかしたり・・・。今思うと、それは不器用な父の精一杯のスキンシップだったのかもしれない。現在、70歳を越えた父は相変わらずたばこをふかしている。そして、私の2歳の娘にも同じようにたばこであそんでくれている。歳をとり、体のあちこちが痛い、と愚痴を言いながらも、娘と遊んでいる父は私と遊んでいたときより楽しそうに見えるのは気のせいだろうか。
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