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【1988/昭和63年】
いまから十数年前。建設現場で働き出したとき、現場監督は一言も口を利いてくれなかった。来る日も来る日も、監督は一言も話してくれることはなかった。自分が未熟なのはわかっていたが、そんな現場監督の態度に内心ひどい憤りを感じていた。「この現場が終わったら、仕事を変えよう」そう思いながら施工日程をこなしていく。やがてそこの現場の仕事を終え、辞めるつもりでいたが、撤収作業を終えプレハブに戻ると、現場監督がたばこを差し出し、「お疲れ様、よくがんばったな。」そのあと一本だけたばこを吸い、それから数年間、その現場監督のもとで仕事をした。あの時、現場監督に差し出され、一服したときの気持ちはいまも忘れずに自分の中で生きている。
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