No.140大田区大森北たばこショップ シエン

　ご主人：店を始めて80年は経っていますね。僕の母は100歳で、今でもたばこ屋をやっていますから。場所はこの店とは別ですが、線路下のガードをくぐったところで、すぐ近くです。さすがに今は趣味で店を開けているようなものですから、夕方からしか営業していませんが、健康のためにもいいですね。お金の計算したりお客様とお話したり。昔は、たばこ販売に貢献したということで、大臣賞をもらったりしていました。

　ご主人：いいえ。昔は洋裁道具やアクセサリーも扱っていました。店も結構広かったし、並びには判子屋もやっていたので、たばこはそういったものの一部でしたね。僕がこの店を継いで44年経ちますが、最初は違う仕事をしたくて、外に出たんですけど、この店をやっていた親戚が体を悪くして店を続けられないことになったので呼び戻されました（笑）。

　ご主人：外国たばこ、JT、キャップ、自主ルート合わせて350種くらいでしょうか。それでも扱ってない銘柄もありますよ。特にうちのように喫煙具から多く揃えている店にはきっとあるだろうと思って、お客様が来て下さるんですよ。下手すると、日本に入ってないたばこまで問い合わせに来ますからね（笑）。昔は大きなデパートに喫煙具を売る専門店が玄関口の横にあったものですが、今はもう撤去されてしまったので、うちのような小売店にお客様が集まるようになったんですね。喫煙具の修理にしても、「キセルを吸いたいんだけど」「手巻きのたばこをやってみたいんだけど」って、相談しにお客様が来てくれる。うちとしては、淘汰されたのが逆に生き残るチャンスになったと考えています。

　ご主人：昭和49年に店が火事になったことですね。隣のパチンコ屋から火が出て、もらい火でした。開店する前の朝で、店の近くまで来たら煙がもうもうと立ちこめていたので、驚きました。誰も怪我はしなかったんですけど、辛かったですね。そのときに胃潰瘍になったり十二指腸潰瘍になったりしましたし、そういう経験があったから、その後多少何かがあっても全然苦じゃなくなりましたね。

　ご主人：お客様を待たせず、いかにテンポ良く販売できるか。常連さんが歩いてくるのが見えると、たばこを先に出しておくの。そのお客様がいつも２箱買う人だったら、２箱出しておくと、「今日は１箱だよ」とか「今日はライターだよ」なんてこともあるけどね（笑）。あとはどこのお店もそうでしょうけど、在庫を切らさないこと。予約で１ヶ月ぶん買うお客様もいるんですよ。４カートンから５カートンが多いけど。そうすると、お客様も自分のペースを決めて吸いすぎたりしないみたい。そういうお客様のものは切らさないようにしています。