代表 榎本 準一
住所 〒140-0001  品川区北品川2−3−7
TEL 03-3471-3964

 東海道第一の宿場として栄えた品川宿。現在は、江戸時代の道幅はそのままに、石畳や街路灯の整備がされ、宿場町の面影残る北品川商店街となっています。その北品川商店街にある丸屋さんは、下駄、草履、雪駄などの和装履物と、たばこ販売のお店として創業しました。150年の歴史を誇る老舗のご主人にお話を伺ってきました。

お店の創業はいつ頃でしょうか?

お話を伺ったご主人

 ご主人:慶応元年です。専売公社よりずっと前、民間の岩谷天狗の時代です。私で五代目になります。創業時から履物とたばこの店で、場所も同じです。ここは品川宿のまっただ中で、賑やかな場所でしたから。

東海道を行き来する人が履物をあつらえたり、直したりしたのでしょうか?

たくさんの下駄、ご主人が花緒をすげてくれます。

 ご主人:行き交う人というより、料理屋さんに行く男の人が履物をここで取り替えていくんですよ。足下を見るという言葉がありますよね。店の人間がお客の足下を見て、通す部屋を変えるんです。そういう所に行く人は足下でお金を持っているかどうか判断されるんですよ。ですから、履物をいいものに替えて遊びに行く。男の人はここでたばこもいいものを買っていくわけ。普段はエコーを吸っていても、遊びに行くときはピースを買って行く。高級なたばこは昔はよく売れたんですよ。

なるほど。ご主人がお店を継がれてどれくらいでしょうか?

婦人用下駄、見た目も鮮やか

 ご主人:50年です。先代の私の父から教わり、お客様から教わりました。東品川に芸者さんがいて、その人たちは履物にすごくうるさいんですよ。でも、うるさいのは、私を早く一人前にしてやろうと思って文句を言うんです。人情からだね。そういう時代でした。たばこのお客様も、店の前に立ったら黙ってスッと品物を出します。自動販売機ではなく、手売りじゃないとイヤだよという人が多いんですよ。それはタスポ導入前からですね。店に人がいないと買わない人がいるんです。

お客様も昔気質の方が多いんですね。

歴史ある店構え、建物自体もおよそ100年だとか

 ご主人:品川の人間って結構うるさいから。「オレが店の前に立ったんだから、オレのたばこを出せよ」というのがお客様の言い分です。昔はそういう人が多かったですよ。今はそういう人は少なくなりましたが。でも、消費税が上がったときには、たばこ4個だと、値段が半端で計算が面倒だから5個買って行くよ、とかお客様のほうが気を遣ってくれるんですよ。粋という言葉は、周りの人を思いやることだけど、他の土地とはちょっと違って、そういう心遣いのできる街ですね。思いやりがあります。

すてきな街ですね。それでは、ご主人がご商売上で気をつけていらっしゃることは?

ちょっと一服していく常連さんもいらっしゃるとのこと

 ご主人:履物でもたばこでもお客様が喜んでくれるようにしています。履物に関して言えば、歩きよい、いい花緒をすげることですね。履物はご本人の足に合わせて花緒をすげるので、すべてオーダーメイドです。よく、浴衣や着物と一緒に既製品の下駄を買う方がいますが、それはサイズ違いの靴を履いているのと同じです。だから痛いし、歩きにくい。でも、本当はそういうものではない。初めて下駄や草履を履く方には、履き方をきちっと覚えていただくよう、お教えします。たばこに関しては、条例とは関係なく、昔から外では吸ってはいけないと言っています。何故かというと、ここは昔、ものすごく人通りが多かったんです。主要な宿場ですから、人の流れが縦横無尽でね。そこで歩きながらたばこを吸うのは危ないんですよ。昔のキセルというのは、歩きながら吸うもんじゃない。座って吸うんですよ。茶屋があって、縁台に座って吸っていた。だから、歩きながら吸うのは良くないよ、と昔から言われていた場所なんです。今はたばこを吸えない場所が増えてきましたが、うちは、店の中に灰皿と椅子があるので、お客様には「どうぞ」と中で吸っていただいています。

周辺案内

品川神社

 文治三年(1187年)に源頼朝が天比理乃?命を勧請し、創建。龍の細工が施された石鳥居「双龍鳥居」があり、品川区の指定文化財に登録されている。

品川区北品川3−7−15
京浜急行線「新馬場」下車徒歩1分

聖蹟公園

 東海道五十三次の最初の宿である品川宿の本陣跡が公園となって整備されている。公園の随所には当時を彷彿とさせる遊具や舗装、トイレが設置されている。

品川区北品川2−7−21
京浜急行線「新馬場」下車徒歩7分

編集後記

 取材前、お店には立川から来たというお客様がいらっしゃいました。丸屋さんには、北海道から沖縄まで、下駄を買いに来るお客様がいるとのことです。「花緒をすげられる下駄屋が少なくなってきたから」とご主人は仰いますが、普段、着物を着たり、下駄を履くことのないお客様に、履き方を丁寧に教えて下さるご主人を慕って遠くから足を運ぶ方が多いのではと感じました。我々にも、和装のときの履物について、色々教えて下さり、たいへん勉強になりました。代々受け継がれた職人の技術と、和装履物の履き方を現代人に伝えて下さる丸屋さん。夏に向けて浴衣を着る機会も増えるので、ご相談してみてはいかがでしょうか。