代表 吉田 正次
住所 〒165-0022  中野区江古田4-16-16
TEL 03-3385-2727

 西武新宿線の沼袋駅と大江戸線の新江古田駅の中間あたりに位置する吉田たばこ店さん。周辺は閑静な住宅地で、新江古田駅寄りには、豊かな樹林と広大な敷地を誇る江古田の森公園があります。こちらで長年、たばこ販売と不動産を営む吉田さんは、なんと御年90歳。ですが、そのようなお年とは信じられないほど、かくしゃくとしていらっしゃいます。今回は色々なお話をご主人に伺ってきました。

お店の創業はいつ頃でしょうか?

お話を伺ったご主人

 ご主人:両親が田端で佃煮屋を営んでいたんです。私は大正生まれで今、90歳ですが、その店は昭和20年3月の東京大空襲で焼けてしまい、両親は造幣局のある向原に疎開しました。私は戦時中は出征していて、そのことをシベリアで聞いたんです。私はシベリアで捕虜になって、昭和24年の暮れに日本に帰ってきたんです。捕虜になってからは、思想的な教育を受けさせられたものですから、帰国してからもそんな運動ばかりしていて、心配した親父が早く所帯を持たせようということで、見合いをして、その場ですぐ嫁さんをもらいました。その後、田端に土地を買って、女房と二人で商売を始めたんです。

それは大変なご苦労をされましたね。田端で始めたご商売はどういうお店だったのですか?

灰皿はお店前に二カ所あります。

 ご主人:食料品の店です。佃煮、漬け物、海産物を売ってました。すごく繁盛しましたね。でも、日本人の嗜好が和食から洋食にだんだん移っていく時期で、このままではダメだなと思って、目白に家を買って、売れてるうちに商売はやめたんです。私はヘラ鮒釣りが好きなんですよ。年中、バイクで石神井にヘラ鮒釣りに行ってたんですが、そこにたばこ店があったので、その話を家族にしたら、親父たちが、自分もたばこを売りたいというので、ここに土地を買って、たばこと駄菓子の店を始めたんです。

では、ここでお店を始めたのはご両親だったんですね。

お隣は息子さんが経営するレストランです。

 ご主人:そうです。でも、一年ももたなかった。当時、このあたりは引揚者住宅だったの。満州から来た人が多くてね。それで、子供が多くて、駄菓子を買いに来るんだけど、とにかくうるさくて、中にはかっぱらう子もいるし(笑)、親がイヤだというので、私が目白から通って店をやることになったんですよ。

なるほど。それでは、たばこと不動産の営業形態にしたのはいつ頃でしょうか?

不動産兼たばこ屋さんです。

 ご主人:私のヘラ鮒釣り仲間が沼袋の駅前で不動産をやっていたんです。それで「不動産やらない?」って言われて、始めました。政府が外国人留学生を受け入れる方針を打ち出して、最初に来日したのが、台湾、中国人です。ところが、外国人は言葉が通じない、友達が来てうるさい、油ものを使うということで、大家さんがイヤがっちゃってね。私は戦時中、シベリアにいたから、外国人は言葉も文化も違うけど、教えればちゃんとすることがわかってる。それで、うちに来れば世話をするよって引き受けてたら、議員さんやお偉いさんからは「これは草の根外交ですよ」なんて言われて、新聞にも載って、みんな来るようになったの。それですごく忙しくなってね。

外国人留学生にしてみたら、ご主人は日本のお父さんですね。それでは、ご主人が商売で気をつけていることは?

看板猫のタロウくん、取材中おとなしくお昼寝していました。

 ご主人:まず、口をきくことだね。お客様とよく話すこと、挨拶をすること。近くに児童館があるんです。私は暇なときは、店の前に立って、そこに行く子供たちにも「おはよう」と声をかけます。危ないときは、「飛び出したら危ない! 止まれ!」と怒るときもあります。不動産のお客様も、たばこのお客様もみんな馴染みでよく店に来てくれますし、私は、いつもこんな感じで、来た人にはざっくばらんに喋っているんですよ。

周辺案内

江古田の森公園

 旧国立療養所中野病院跡地の豊かな既存樹林をいかした防災公園。広い敷地にハナミズキの丘、ビオトープ池、遊具が設置され近隣住民の憩いの場となっている。

中野区江古田4-16-16
都営大江戸線「新江古田」下車徒歩10分

氷川神社 江古田

寛正元年(1460年)に素戔嗚尊を祀るため、小さな祠を建てたことに始まる。当時は牛頭天王社と呼ばれていた。中野区指定無形民俗文化財の江古田獅子舞が有名

中野区江古田3-13-6
都営大江戸線「新江古田」・西武新宿線「沼袋」下車徒歩15分

編集後記

 戦争中の体験談から、帰国してからのご商売立ち上げ、その変遷まで、色々なお話をしていただきました。戦時中はたいへんご苦労されましたが、戦後の日本復興も、ご主人のようなパワフルな方がいたからこそだと感じました。保護司を37年も務められ、瑞宝双光章も受勲されています。また、不動産のほうでは、アジアの留学生の受け入れにも尽力され、新聞にも取り上げられました。とても、お元気でお話も楽しく、まさに頼れる「父」といったご主人です。貴重なお話の数々、本当にありがとうございました。