代表 榎本 善守
住所 渋谷区本町

 新国立劇場や東京オペラシティなど文化の香り高い施設、同時に昔より地元の人々に愛されてきた商店街や家並みに親しみを憶える落ち着いた環境の初台。その初台で生まれ育った「ショップ エノモト」のご主人榎本さんは、新国立劇場ができる頃から商店会の会長として、地域活性化のために様々な活動をされてきました。劇場、行政、町会、商店会が一丸となって街づくりを行っているお話などを伺ってきました。

お店の目の前が“新国立劇場”ですね

お店は新国立劇場の目の前にあります。

 6年前に新国立劇場ができたんです。そのときにこの商店街の歩道も一緒に拡張されたんですが、拡張する時に歩道も味気ないアスファルトにするんではなく、街の雰囲気を少しでもいいものにしようとレンガの歩道にしたり、街路灯も商店会で立派なものを用意しました。
 歩道にはJTさんの協力でスタンド灰皿も10台設置してあります。その灰皿は1台1台商店会の会員が担当を決めて管理しているんですが、毎日の清掃が大変なんです。でも逆に考えれば、「街が潤って人通りが多いから汚れる」と言い聞かせて頑張っています。お客様が来て下さることは、ありがたいことですから。
 また、毎年夏のイベントを商店街と新国立劇場が一緒になって行っているんです。今年は「アーツシャワー2004」といって、音楽、歌、ダンス、展示会など、子供から大人まで気軽に楽しめるお祭りでした。オペラタウン商店街では、新国立劇場の正面広場で「縁日&ビンゴ大会」を主催しました。

街路灯のプレートを有名な方にサインして頂いたとか

「ショップ エノモト」さんがあるオペラ通り南側街灯(初台駅北口出入口隣)のプレートは、フィレンツェの巨匠“フランコ・ゼッフィレッリ”氏直筆のもの。

 オペラ通りというのが、ちょうどお店の前の通りなんですが、フィレンツェとウィーンのオペラの巨匠に“オペラ通り”と書いてもらったプレートを掲げているんです。
 劇場の理事さんに、「どうしても巨匠お2人に“オペラ通り”と書いてもらって欲しい」とお願いをして、両方の国へ足を運んでいただいたんです。それまでに日本からコミュニケーションをとっていたので、無償で快く引き受けてくださいました。そのおかげもあってか、最近はどこの地図にでも“オペラ通り”という名称で載るようになりました。
 新国立劇場の中には80銘柄入る、うちのたばこ自販機を置かしてもらっているんです。公共の施設ということで館内禁煙になっているから一般のお客さんは利用できないんですけど、スタッフのための自販機なんです。でも人数が400人位いるから、ちょっとした住宅街の自販機なみの売上になりますよ。
 余談ですが、オペラの出演者はほとんどたばこを吸わないんですが、バレエダンサーは結構吸われますね。

劇場が出来る前は?

お店からみた新国立劇場と東京オペラシティ

 通産省の東京工業試験場がありました。化学薬品を試験していたところでしたが、筑波に移転しました。跡地には学校やゴミ処理場建設の案もでていたんですけど、結果的に落ち着いたのが目黒の東大跡地利用に断られた、この新国立劇場だったんです。ゴミ処理場じゃなくて、ほんとよかったです(笑)。
 劇場ができる前は、正直言って死んだ街だったかもしれませんね…。新宿・渋谷が近すぎるために大きな買い物は全て持っていかれる。住宅地と駅との廊下みたいな街というのかな。それが劇場ができて、ようやく街らしく整ってきたという感じです。
 これからまだ発展する要素はいっぱい持っている街だと思いますよ。

行政と一緒になって地域活動が活発のようですが

もともとは時計と眼鏡を主に扱っておられたということで、今でも替えのバンドは豊富に取り揃えています。

 町会や商店会で構成された“渋谷地区美化推進委員会”が中心となって、渋谷区、地元企業もボランティアとして参加して下さり、月に1回、駅を中心に本町一丁目界隈を清掃しています。参加人数は毎回40名程度になりますね。特にこの地区は小学校の子供たちも一緒になって、「ゴミゼロ作戦」と銘打った美化活動も行っています。
 他にも、近くに警察署がある関係で「防犯パトロール」、消防署がある関係で「年末の火災予防」、交通安全日には町会から当番を決めて「横断歩道での交通整備」と、町会と商店会、行政が上手く協力しあっています。

たばこ屋さんとしての今後の展望などありますか?

将来的には、店内を葉巻が嗜める談話室にしたいそうです。

 昭和60年にビルを建てて、それから店舗を3回改装して、やっと自分なりに納得のできるコンパクトな店舗にすることができたんです。今のようにたばこの什器を前面に出して、お客さんに見える形にしたことで、カートン買いが増えたり売上が伸びましたね。
 今後は、店内に喫煙所を作りたいと思っているんです。煙を吸い込む空気清浄機付きの大型の灰皿を置いて、コーヒーの無料サービスもして、ちゃんとした喫煙所にしたいと思っているんです。それができたら高級葉巻にも力を入れようかと思っています。

周辺案内

新国立劇場

 3つの劇場からなる新国立劇場は、オペラ劇場の他に、演劇や舞踊のための中劇場、実験演劇上演を想定した小劇場を持つあらゆる領域の舞台芸術に対応した施設となっています。
 また、コンサートホールやミュージアム、オフィスフロアを備えた東京オペラシティビルも隣接しており、いつもアートとともにあるコミュニケーション空間として発信しつづけています。

編集後記

 新国立劇場ができたことをきっかけに、官民が一致団結して地域活性化に取り組んでいる、商店街のありかたとしては、まさに理想のモデル地区ではないでしょうか!
 地域のために様々な活動で多忙なご主人ですが、お休みの日には月に2、3度出かける釣りと、たまに観賞されるオペラも楽しみの一つだそうです。将来は、店内で葉巻を片手に釣りとオペラ談義が飛び交うような、そんな空間を楽しむことができるようになるのでしょうか。ぜひ楽しみにしています!