1989- 平成
たばこ1つとってもその国の文化がみえてきます

「いっぷくの思い出」入選受賞
【1997/平成9年】
久しぶりに実家に帰省した時の事です。実家のほうは電車ではなくディーゼル機関で走る昔ながらの汽車というやつで、車内も学生が乗る時間のみが禁煙指定でその時間帯を過ぎれば車内での喫煙もできる車両でした。そんな車内でタバコを吸おうと出したら丁度切らしていて、その様子を見ていた70代位のお爺さんが「よかったら吸うか?」と差し出してくれました。銘柄こそ違えども有難く頂戴しました。それからそのお爺さんと色んな話をしているうちに、私の手のひらを見て「今の若えもんの手はおなごみてえだな」と言われました。その理由を尋ねたところ、昔の男は煙管を吸った後に手のひらで消したという話を聞かされました。そう言えば祖父もそうだったな〜と思い出しました。そう考えると昔の人の手の皮は相当に厚かったのでしょう。つまりそれだけ仕事をし苦労もしていたんだと気づかされる話でした。たばこを介した世代を超える接点を持てたことによって、色んな生の話を聞けた上に忘れかけていた今は無き祖父のことを懐かしく思い出させてくれた一本に感謝したくなる出来事です。あれから5年近く経ちますが、その頃と今の私の吸っている銘柄は変わっていません。
[20代/男性/愛知県]
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