1975-1984 昭和50年代
おつかいと言えばたばこ。ささやかなお駄賃がシアワセだった頃

「いっぷくの思い出」入選受賞
【1975/昭和50年】
もう30年前のことである。些細な事で父親と口論となり、思いっきり殴られた。頬の痛みと興奮した気持ちを落ち着かせるがために、2階のベランダに出て夜風に吹かれていた。背後に人の気配を感じた。父は「吸うか?」との言葉と一緒に一本のタバコを差し出した。お互いに言葉を交わすことなく、タバコを吸いながら夜空を見ていた。その日を境に、父子の関係から男同士の関係になったような気がずっとしている。年老いた父と美味そうに一服できる時間はそんなに長くはない。
[40代/男性/神奈川県]
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