代表 十代田 洋勝
住所 練馬区練馬

 一度見たら忘れられないお名前のご主人・十代田(そしろだ)洋勝さん。芸名のようですが正真正銘の本名です。中野区育ちのご主人ですが、15年間のサラリーマン生活にピリオドを打ち、奥様の実家の金物屋さんを一緒に経営し、今はたばこ屋さんを独立させ専門店としてご商売されています。自らパイプを原木から彫り、実際に使われる物から芸術品としての鑑賞用までハンドメイドされるという、商いと芸術の両方の顔を持つ十代田さんにいろいろなお話を伺いました。

元々は金物屋さんだったとか

カフェのようにおしゃれな外観です。

 ええ、創業120年の万屋(よろずや)、今で言う金物屋として商売を始めて、その当時からたばこも扱っていたそうです。この交差点の2角を建築・家庭・雑貨金物の3種の金物屋で占めていたんですが、今は大通りの両サイドで金物屋という時代でもないですから、平成8年にこのビルが完成したと同時に金物屋を1店舗に統合して、たばこ屋を独立させました。

どのようなお客様がいらっしゃいますか?

たばこ屋さんの向かいには、創業120年の金物屋さんが。

 うちは品揃えが350種扱っているから、常連のお客様が多いかな。一番遠い方だと埼玉の所沢から、3ヶ月に1度いらっしゃいます。そのお客様が吸われるたばこはどこにでも置いてある銘柄ではないので、その時にまとめて8カートンお求めになります。
 常連さんとの会話を大切にして、時にはお茶をお出しして長居される年配の方の話し相手になっていますよ。

この商店街のお名前は?

 私の所は「練馬アーケード商店街」に所属してます。今アーケードは50m程しかかかっていないんですが、大江戸線の工事の時アーケードが邪魔になるからって、取っちゃったんです。工事が終わったら復旧させる予定はしていたんですが、取ってみたら空が大きく感じて、この方がいいんじゃないかって話になったんです。
 練馬駅南口は5つの商店街が連合会を作って、仲良しですよ。昔は商店街ごとに氏神様が違って、仲が悪かったみたいですけど(笑)。

手作りのパイプが飾ってありますが

テーマは「ラフ(野生的な)」。ご主人の作品です。

 昭和50年代、ハンドメイドのパイプが流行った頃にパイプに力を入れて、仲間と一緒に「ハンドメイドパイプクラブ」を設立したんです。当時のお店の3階をメンバーに開放して、ボリボリと木を削っていたわけですよ。どんな物を彫るかというテーマを雑談しながら決めて、各自で彫って2週間後発表し合うわけです。全盛期の時でメンバーが50人位かな。原木も道具もたばこも売れるという楽しい商売だったんですが、今は鳴りを潜めています。

パイプのテーマとは?

ハンドメイドパイプの個性的な作品がディスプレイされています。

 パイプには基本的な23個の型があって、それから挑戦します。それから一通り型をマスターすると抽象的なテーマを決めて、例えば“瀟洒なパイプ”(しょうしゃ。あか抜けしている様)とか、テーマにそって独自の感性を出していくわけです。でも抽象的なテーマを付けると、実用には向かない。そのパイプで吸えないこともないけど、主として造形美を楽しむわけです。私は事務局としてやっているんで、熱中するとまずいですが。

スモーキングコンテストの方は?

たばこ屋さんのお隣と2階はパン屋さんです。

 1度、ハンドメイドクラブのメンバーで行ったことがあるんですけど、みんな「まいった!」って帰っていきましたよ。普段から訓練していないと、クラクラして倒れそうになります。
 最近、若い方でも葉巻に興味を持っている方が増えてきているので、パイプなどもちょっと勧めてみると試してみる方もいますよ。いいパイプを求めると万単位ですけど、コーンパイプなどは千円で購入できるんで気軽に始められますよ。

お休みの日の楽しみは?

 家内と2人で歌舞伎の観賞に行くことですか。
 私はどういう訳か、中学の頃からずっと歌舞伎に夢中で、たまにですけど、定休日になると歌舞伎を見に行くことが楽しみです。
 それと、私は“ジャイアンツ”ファンなので、お店で定連さんと「最近の巨人は調子いいね~」なんて話すのも好きですね。

周辺案内

練馬文化センター

 コンサート、オペラ、バレエ、歌舞伎など様々な芸能・芸術を楽しめるイベントホール。隣接する「平成つつじ公園」は野生種・外国種などの色とりどり、500種類以上のツツジが植えられ5月中旬には満開の花々を観賞することができます。

白山神社

(西武豊島線・都営地下鉄大江戸線 豊島園駅下車徒歩5分)
 白山神社は練馬氏神で平安時代に建てられたと言われており、境内には、源義家が“後三年の役”の際に戦勝を祈願して奉納したと言われている大ケヤキがあります。2本の大ケヤキは樹齢900年、樹高19m、幹周り8mの大きさで国の天然記念物に指定されています。

編集後記

 サラリーマンを辞めて、金物屋を手伝われた最初の頃は「いらっしゃいませ」も恥ずかしくて言えず、人からお金を貰うなんて申し訳なくて困ったと話して下さったご主人。昔は金物屋で重たいものを運んで、駆けずり回っていたという面影はなく、繊細でゆっくりとしたしゃべり方は、テレビで見る歌舞伎役者さんのようでした。内面の嗜好が外見に現れています。