代表 遠藤桂子
住所 中野区大和町1-10-5
TEL 03-3338-3852

中野区大和町の住宅街にある啓明堂さん。すぐ向かいに中野区立啓明小学校があり、その学校名の由来を啓明小学校のHPで見てみると、大和町の東に位置することにちなんで、「四書五経」の「東に啓明あり、西に長庚あり」から引用したとのこと。啓明は明けの明星・夜明けの金星を意味します。

とても素敵な屋号の啓明堂の奥様にお話を伺ってきました。

お店の創業について聞かせてください

教科書販売とたばこのお店の奥様にお話を伺いました。

奥様:私の父がお店を始め、すぐ向かいにある啓明小学校にちなんで、啓明堂と名付けました。

教科書、文房具、たばこを扱うお店ですが、その父が若くして狭心症で突然亡くなってしまったんです。私の弟もまだ小さい頃でした。母は商売のことが何もわからないままお店を引き継ぎ、とにかく一生懸命働いていましたよ。

突然のご不幸でお母様は大変なご苦労をされたんですね。

たばこの棚です。

奥様:祖父が母を心配して、昔で言う女中さんをうちに寄越してくれたんです。母の実家の石川県から、店のことや家のことをやってくれるお姉さんがたくさん来てくれました。昭和の時代ですから、たばこもすごく売れました。お年賀用のたばこをお姉さんとたくさん包装して積んだのを覚えています。

お店には文房具も置いていたので、学校が始まる前に子供たちが文房具を買いに来るんです。ですから、朝は学校が始まる前にお店を開けて、夜も10時頃までやっていました。

お正月もお店を開けたんじゃないかしら。母は休む間もなく頑張っていました。

お忙しかったのですね。奥様はいつ頃からお店を継がれたのでしょうか?

向かいにある啓明小学校と同じ名前の啓明堂です。

奥様:母は頑張って働いていましたが、50代でがんになってしまったんです。私が結婚して1年ほど経った頃でした。母が入退院を繰り返したので、私がお店を見るようになりました。

主人とは家が隣同士で結婚したので、私はずっとこの家に居て、お店、母の介護、子育てをしました。サラリーマンの主人は自分のことは自分でしてくれて、まさに戦友でしたね。

主人とふたりで頑張ってきたから、今もこのお店が残っているんだと思います。主人も定年退職して70歳で亡くなりましたが、本当に感謝しています。

今お店は奥様が見ているんですね。

教科書の在庫はまだまだこれから増えるそう。

奥様:そうです。新学期などで大量の教科書を学校に納品するときは、息子が車で配達してくれます。お店のほうは、今年は私の体の調子があまりよくなくて、具合が悪いとお店を閉めてしまいますが、朝だけは通学の小学生たちに「おはよう」って声をかけるために開けています。ボランティアですね。朝8時になったら開けて30分くらい声がけするんですよ。

最近は知らない人と喋らないほうが安全のためにもいいと思いますし、そう教わっていると思いますが、最初はなかなか挨拶できなかった子も、啓明堂のおばさんとわかるようになって、ちゃんと「おはようございます」って挨拶してくれるようになって、とってもかわいいです。子供たちからエネルギーをもらえます。

子供たちも地域の大人に見守られているという安心感があると思います。他にも奥様が習慣にしていることや、気をつけていることはありますか?

出入り口の脇には自動販売機もあります。

奥様:毎日、お店の周辺を掃除します。綺麗に掃除して隙のないようにしているんです。今、変な事件も多いですよね。お年寄りやひとり暮らしの家を狙った強盗や空き巣や、子供への付きまといなども。

毎日外でお掃除していると、見慣れない人がいれば何となくわかりますし、自己満足ですけど、掃除すれば気持ちがいいですよね。私が掃いていると、近所の奥様も掃いてくれるようになって、吸い殻のゴミもずいぶん減りました。人間心理で綺麗なところにはゴミを捨てにくいでしょ。今の時期は落ち葉がすごくてキリがないですけど(笑)、自分の気持ちもスキッとします。

周辺案内

大和町八幡神社

永承年間(1046-1053年)源義家の軍勢が前九年の役出征のため立ち寄り、この地で石清水八幡宮の遙拝所を設け、戦勝祈願の祭祀を行いました。その後、1056年に創建。毎年7月には「DAIBON」と呼ばれる大規模な大盆踊り大会が開催されます。

中野区大和町2-30-3
西武新宿線「野方」下車徒歩15分

啓明公園

環七通りからすぐの住宅街のなかにある児童公園。ブランコなどの定番の遊具と、日陰にもなって一息つける藤棚の下にはベンチが設置してあります。広々とした公園なので、近所の子供たちや家族連れで賑わいます。

中野区大和町1-21
JR中央・総武線「高円寺」下車徒歩10分


編集後記

とても明るくてお話が楽しい奥様。たばこの棚には昭和の大女優・高峯秀子さんがたばこを吸っているピンナップが額に収められて飾ってあります。これは、今はやめてしまった近所のたばこ屋さんから譲り受けたのだとか。

付き合いのある方々や、母校でもある啓明小学校との絆をとても大切にしていらっしゃって素敵だと思いました。

これからもお客様のために、地域のために元気にお店を続けてほしいと思います。