代表 朝日 博志・静枝
住所 〒116-0012  荒川区東尾久4-12-12
TEL 03-3894-6407

 情緒あふれる都電沿いに位置する「川の手もとまち商店街」。その中に、今回ご訪問した「朝日屋商店」さんがあります。終戦後間もなく、この地で開業した先代を継ぎ、現在はご夫妻で店を運営されているのだとか。下町ならではの温かさと、おふたりの息のあった楽しいお話をお伺いしてきました!

たばこ以外に文房具も扱っていらっしゃるのですね

先代が戦後すぐに創業した朝日商店。

 ご主人:もともとは、生活品を扱う雑貨屋だったんです。終戦後すぐ、ちょうど私が10歳の頃に両親がこの場所で商売を始めましてね。文房具やたばこを専業にしたのは、昭和30年頃からです。当時から、小学校の指定教科書も扱っているんですよ。
 奥様:今は、直接学校に教科書を納めているのですが、私が嫁いだ頃は(昭和33年頃)、学校に通う子どもたちが店へ教科書を買いに来ていたんです。だから、入学式や学年の変わり目にあたる4月と、新学期が始まる9月は忙しくてね。店先にズラーっと、教科書を買いにくる子どもたちの行列ができていたんです。当時は、先代と私たち親子2代でお店を切り盛りして、繁忙期にはアルバイトさんも雇って手伝ってもらってたんですよ。忙しかったけれど、活気があって楽しかったわね。

戦後の商店街はどんな様子でしたか?

いつも仲睦まじく、笑いの絶えないお二人です。

 ご主人:この辺りは軍事工場があったので、一帯が空襲を受けて焼け野原でした。本当に何もなくて、ここから上野の森まで見渡せたほどですよ。
 奥様:だから先代は苦労したと思いますよ。物資のない時代でしたからね。まだバラックの家ばかりだった時代に、先代は故郷の長野からわざわざ木材を取り寄せて本建築の家をここに建てたんです。その後建て替えを行ったのですが、取り壊す時は寂しそうにしていました。苦労した時代の思い出が詰まっていたんでしょうね。

今はおふたりで店番を?

 奥様:だいたいは、ふたりで店番をしてますね。定休日は日曜だけなので、平日に出かけたい時は早い者勝ち!(笑)予定が入ったら、すぐにカレンダーに書き込むんです。すると、主人が店番をしてくれています。主人とはいつも一緒にいるんですよ。みなさん「羨ましいわね」って言ってくださるんですけどね。
 ご主人:でも、大変なこともありますよ!(笑)
 奥様:ずっと顔を合わせていますから、ケンカもしますし…。娘や嫁も近くに住んでいるので、忙しい時は手伝いに来てくれるんです。

たばこ店を営んでいて嬉しかったことは?

商店街には数々の著名人も訪れました。

 ご主人:この近くに住んでいらっしゃった常連のお客様が引っ越しをされたのですが、今でもわざわざ車を飛ばして、うちにたばこを買いに来てくれることがあるんです。そういう時は、「あー、嬉しいな」と思いますね。
 奥様:川の手もとまち商店街には、人と人とのふれあいとか人情が残っているんですよ。だから、懐かしくなるんでしょうね。毎日買いに来られる方が、一日でも姿を見せないと「あら、風邪でもひいたのかしら」って身内みたいに心配になりますからね。

接客をするにあたって気をつけていることは?

ここに来れば、たいていの文具はそろいます。

 奥様:この辺りは、ご年配の方が多いんですよ。だから店に入ってくる時に、つまずいてころんだりしないよう常に気を配っています。
 ご主人:年配の方は、話をしたくて来てくださる方が多いんです。だから、いらっしゃったら、しばらく話し相手になっているんですよ。私もそうやってコミュニケーションをとるのが楽しみなんです。

趣味は何ですか?

美しい紅葉並木が迎えてくれました。

 奥様:私はお友達と一緒に「歩け、歩け」をすること!(笑)「あ、ここにこんな花が咲いている」「木々が色づき始めたな」なんて四季を感じながら、街のあちこちを歩いて散策するんです。楽しいですよ~。昨日も浅草へ行って歩いて帰ってきたんです。
 歩くのは健康にもいいですからね。
 ご主人:私はボーリングですね。もう引退したのですが、昨年までは区のボーリング大会に毎回出場していました。地区大会で優勝したこともあるんですよ。
 奥様:この人、ボーリングはとても上手いんです。もう、おじいちゃんだから大会に出るのはやめなさいって言ってるんですけど(笑)。いい時は、250ほどのスコアを出すんですよ!

周辺案内

都電荒川線

 早稲田~三ノ輪橋間、約12.21キロを、のんびりと走る路面電車、都電荒川線。時速約13キロで走る車上からは、ゆったりとした景色の移り変わりを楽しむことができます。変化が激しい世の中で、この路線だけは古き良き時代を今に語り継いでいるように思えます。

都立尾久の原公園

 荒川区唯一の都立公園である都立尾久の原公園。東側には広々とした尾久運動場が隣接し、道路を挟んで北側には隅田川、荒川が流れていて開放感は抜群です。特別な遊具はありませんが青い芝生が目に鮮やかで、公園を隔てるように続く街路樹は四季折々の色をまとい私たちを楽しませてくれます。

住所:116-0012 東京都荒川区東尾久7-1
※都電 東尾久三丁目下車 徒歩10分

編集後記

 「あー、夫婦っていいもんだな」と感じさせてくれるような仲の良い朝日夫妻。まるで夫婦漫才のような楽しい掛け合いの中にも、互いを思いやる優しさが垣間見られ、ほのぼのとした気分にさせていただきました。戦後間もなく、ご両親を手伝いながら店を守ってきたご主人、義理のご両親と共に店を支えてきた奥様。ともに苦労はあったでしょうが、苦労を苦労と思わず笑ってやり過ごす強さをおふたりから感じ取ることができました。いつまでも仲良くお元気で店を営んでいただきたいと思います!