1989- 平成
たばこ1つとってもその国の文化がみえてきます

「いっぷくの思い出」入選受賞
【1996/平成8年】
大好きな父と忘れられないいっぷくをしたときの話です。そのころ父はC型肝炎を患い入院していて、もう手の施しようが無いくらい病気が進行している状態でした。私は毎日のように父の看病に出かけて、気分がよさそうな時は話をしたり、車椅子に乗せて散歩したりして、それなりの楽しいひと時を過ごすことができました。あるお天気のいい日に、いつものように散歩をしていると、父の会社の同僚の人がお見舞いにいらして、何を思ったのかいきなりタバコを父に勧めたのです。もともとお酒とたばこが無くては生きられないような父でしたので、懇願するような顔をみたらダメとは言えませんでした。いっぷくしている時の嬉しそうな父の顔は今でも忘れられません。それ以降二人で散歩をしてわ1本だけのお楽しみが何回かありましたが、しばらくして父は亡くなりました。今でもお墓参りのときは、父の好きだったロングピースはかかせません。
[30代/女性/東京都]
←もどる つぎへ→