1975-1984 昭和50年代
おつかいと言えばたばこ。ささやかなお駄賃がシアワセだった頃

「いっぷくの思い出」入選受賞
【1982/昭和57年】
 妻のご両親に初めてあいさつに行ったときのこと,お父さんは,見るからに頑固そうな方で,沈黙の時間だけが過ぎていきました。私が,意を決して「娘さんと結婚を前提におつきあいをしたいのですが」と切り出すと,お父さんは「結婚は,まだ早すぎる」と言ったきり,その日はそこで終わりました。当時,私も妻も20歳になったばかりでしたので,親としては,大切な娘との付き合いをそう簡単に認めてくれるはずがありません。それから,何度か足を運んだある日,お父さんに「ちょっといいか」と促され,近くの川辺で妻が幼いころのことを話してくれました。そして,お父さんは「頼むぞ」と私にセブンスターを差し出し,二人で川面を眺めながら,そのタバコをすいました。あれから20年,シャイでちょっと気取ったお父さんは,今も元気にイチゴを作っています…
[40代/男性/鹿児島県]
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