1985-1988 昭和60年代
たばこが取り持つ縁もある

「いっぷくの思い出」入選受賞
【1988/昭和63年】
学生時代「まだ稼ぎも無いのにたばこなんて吸いやがって」と親父の前で堂々と吸えなかったあの頃、就職して何日か経ったまだちょっと肌寒い4月終わりごろの事だった。その夜たまたま買い置きが無かったので親父のタバコを一本貰おうと怖いながらも口に出した。無口な親父は黙って一箱”ポン”とくれた。おなじ銘柄を吸っていたにもかかわらずその一本一服が違う味に思えた。何か吹っ切れたような苦くてそしてさわやかな複雑な一時だった。
[30代/男性/神奈川]
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